従業員満足に力を入れて儲かる会社を作ったケース

自らを犠牲にして、顧客の無理な要望に応える。こんな光景が我が国の至る所で繰り広げられています。そのおかげで企業が存続している側面もあるのでしょう。
しかし、従業員満足度向上を戦略として掲げ、生き残りのための一手と位置づけている企業があります。従業員満足度を向上させることがなんで生き残りにつながるのか、どうやってつながるのか疑問に思うのが普通です。福岡のある企業の取り組みを分析するとその疑問が氷解します。

従業員満足主義を徹底して成功したケース

1.拓新産業の事例

福岡の「楽園企業」は社員をここまで休ませる
社員満足最優先でも儲かる会社はつくれる!
http://toyokeizai.net/articles/-/125923
(出典:東洋経済オンライン)

 残業なし、休日出勤なし、有給休暇の完全消化、週休2日制。平日・休日、昼・夜を問わずハードな建設業界の中で、20年前から異例の充実した福利厚生を実践してきた会社が、福岡にある。拓新産業だ。
都市部から離れているうえ、新卒採用枠は2、3人。にもかかわらず、毎年数百人もの学生が押し寄せる。「社員満足主義」を掲げ、働きやすい職場づくりに取り組んできた一方で、創業以来、40期連続最終黒字を達成している。

 

上の記事は福岡の拓新産業という会社の事例です。記事が少し長いので要約するとこうです。

  1. 採用をかけても人が来ない
  2. 社員の満足度を高めて魅力ある組織を作るぞ
  3. 残業なし、休日出勤なし、有給休暇の完全消化、週休2日制など「社員満足主義」を掲げる
  4. 社員「お客様になんて説明すりゃいいんだ」「評価に響くんじゃないのか」と反発
  5. 幹部「俺たちにしわ寄せがくるんじゃないのか」と反発
  6. 社長「でもやる!」
  7. 例外を作らず徹底。顧客の要望があっても定時後には絶対に門を開けない。
  8. 大口顧客に依存せず、小口顧客をたくさん集める顧客構成で、顧客に媚びなくても大丈夫。
  9. 折れそうになったけど、長野の伊那食品工業、岐阜の未来工業に話を聞いてがんばった
  10. 3年後制度が浸透
  11. 新卒採用に2,3名の枠に100名以上が殺到
  12. ずっと黒字

 

2.意志を持って従業員満足主義を徹底すること

稼ぎ続けようと思ったら、顧客の要望に応える必要があります。しかし、それだと従業員の時間が犠牲になります。

一方、従業員の満足度を向上させようと思えば、ある程度顧客の要望を突っぱねる必要が出てきます。拓新産業では、お客様の要望でも定時を過ぎると絶対門を開けません。お客さんからしたらたまったもんじゃないですね。

顧客「いや、どうしても必要なんでなんとかしてくださいよ」
自社「どうしてもできません。そういう決まりなんです」

こんなやり取りは、普通では考えられないのではないでしょうか。
しかし、強固な意志でこの従業員満足主義を貫きます。
これは人事部単独でも、現場のリーダーでも成し得ません。企業のトップのものすごく強い意志が必要になります。

・リーダーが規則を作り、それを鉄の掟として守りきる。
・その際に発生する諸々の不利益は甘受する。つまり顧客満足度は短期的に犠牲になることを覚悟する。

 

3.商品の優位性が必要

商品の優位性がなければこの従業員満足主義は成り立ちにくくなります。

商品の優位性が高ければ高いほど、顧客に対してわがままを言えることになります。従業員がわがままを言っても、その商品を選ばざるを得ないからです。

商品の選ばれる理由が、従業員の手間ヒマから成り立っている場合は、従業員の時間を使わざるを得なくなるので、残業や休日出勤もやむを得なくなります。

よって、従業員満足主義には以下の条件が必要になります。

・営業時間や休日にも対応してくれる等の「選ばれる理由」を犠牲にしても、なお選ばれる理由がある。つまり商品に魅力がある。

実は従業員満足主義にはこの要件が必須になります。つまり優れた戦略が必要というわけです。

 

4.顧客の再構成が必要

不利益は甘受するといっても、大口顧客のわがままは聞かざるを得なくなりがちです。その取引がなくなると甚大な不利益を被るからです。

そこで社長は、小口顧客を集めることにしました。そうすれば、顧客が離れていってもダメージが少ないからです。大口顧客に依存すると、大口顧客の言いなりにならざるをえないシーンがきっと出てきます。そこを見越した社長の英断です。

「売上高の8割は2割の顧客から」といった法則めいた言説がありますが、あえてこの構成を打破するには、強固な意志がやはり必要となります。理屈ではわかりますが、これを実践するのは容易なことではないでしょう。

 

5.以上を裏返すとブラック企業に!

以上のお話から、
・社長がリーダーシップを発揮せず、顧客満足に振り切り、短期的利益を指向する。
・商品優位性がなく、従業員の献身に依存している。
・売上構成を大口顧客に依存し、顧客の言いなりになる。

こうすると、従業員不満足主義=ブラック企業のできあがりですね。

世の中にはすばらしい企業がたくさんあります。これからも良い企業をご紹介してまいります。

 

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