確かに「風通しがいい職場だなあ」「うちの職場は風通しが良くないんだ」などと日常会話で語られ、人は「風通し」を肌で感じているのは間違いないようです。
しかし、「風通しが良い」とは何がどうなった状態なのかを定義して話を進めないことには、有効な手立てを模索することはできないのです。
風通しとは
風通しとは「組織の中で意思や情報が通じ合う具合」を意味します。人の心を部屋にたとえ、そこに生じる様々な感情や意見を空気に見立てています。締め切られた部屋では、空気が滞り淀むわけです。
ちなみに、英語では「風通し」をventilationといい、日本語と同じように、組織での風通しの意味でも用いられます。これはただ英語が日本語に翻訳されただけなのでしょうか?それともたまたま日本と英語圏で同じだったのでしょうか?
風通しが良くないとどうなるのか?
はっきり言って風通しが良くなければ良くないで、組織目標が継続的に達成できていれば問題ありません。
感情や個人的意見を押し殺し、ただただミッションを攻略していく。ある種、ハードボイルドなプロフェッショナルを思わせさえしますね。
しかし、多くの場合マイナスに作用します。組織目標達成の阻害要因になりえてしまうのです。
・現場の情報が正確にマネジメント層に伝わらない。これによりマネジメント層は偏った情報で意思決定をすることになりかねない。
・ある個人の経験が組織のナレッジとして蓄積されない。ある失敗や成功を横展開できないという不効率を生じる。
・個人の発見やアイデア、提案が個人にとどまり、発展しない。建設的議論が起きない。
・感情を押し殺すことで人間関係に歪みを生じさせ、精神的に追い詰められ、モチベーション低下やメンタルヘルス不調、重大なミス、離職を招きかねない。
・行き場のない感情が腐り、愚痴、不平、悪口、批判となり、非公式のネガティヴ集団を作り出す。
・顧客に嫌な感じを与え、長期的な顧客満足度を下げる可能性がある。
風通しが悪くなる原因
風通しが悪くなるのは、組織の一人一人が心の窓を閉ざすからです。そして、閉ざすのは開いても良いことがなかったからです。嫌な思いをしたからです。あるいは誰かが勇気を出して心を開いたけれども、嫌な目にあわされていたのを目撃したからです。
心を開いて、事態を打開しただとか新しいものができただとかお客様に感謝されただとかの経験があれば、心を開く文化が形成されていきます。
ところが、心を開くことがデメリットしか予感させないのであれば、合理的に考えて、心を閉ざすようになります。
私はかつて上司に「お前はなんのために働く?」と聞かれて馬鹿正直に「まずは生活のためです」と答えました。 すると上司は若干芝居がかった様子で「それは間違っている」と説教をぶってきたのです。以来私は本音を言うことをやめ、上司の中にある「正解」を、探すようになりました。
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