蒼天航路という三国志の漫画で、魏の国の曹操が、死にかけの郭嘉にリーダー論を説く場面があります。「王がいかにあるべきか」を問われた郭嘉は、病床で命を振り絞りながら、国の具体的な統治方法を次々に論じました。しかし、曹操は郭嘉の統治論を「村の政治」と一蹴し、自身の論を展開します。この場面がリーダーシップ論の真理の一部をよく表していると思いますのでご紹介します。
曹操は郭嘉の村長統治論を一蹴した後、こう続けます。確かこんな意味のことを言っていたと思います。
「王は誰も見たことのないご馳走を、そしてその味を思い浮かべてしまう」
死にかけていてもはや先のない郭嘉に嬉々としてご馳走の例を挙げる曹操に周囲はドン引きです。
この発言からリーダーにはビジョンが必要だというありがちなリーダーシップ論に帰結しそうですが(いやもちろんそれも重要なのですが)、注目すべきはさらにその先にあります。
強いリアリティがリーダーシップには必要
それはリアリティの強さです。ビジョンは視覚情報ですが、その味まで思い浮かべるというところです。
味はリアリティの強さを表しています。触れることのできるくらいのリアリティを感じられている状態で現実を見たとき、多くの欠落が自然と見えてくるはずです。この欠落が強い違和感を与えるため、これを埋めるべく様々な材料を揃えていく強い動機が生じますし、他の人に対しても強く働きかけることができるようなります。
曹操の発言はこのリアリティの強さの重要性を示唆している点で、巷のリーダーシップ論やビジョン論に一歩先んじています。
強い影響力の前提とは
リーダーシップの本質は影響力と言われています。各種理論の紹介はまた別の機会に譲りますが、メンバーに何の感化も生じさせないのであれば、リーダーはただのお飾りに過ぎません。
そのため、どのようにしてリーダーシップを発揮するかを論じるのに労力を割きがちです。実のところこれらの方法論は、ゴールイメージの強いリアリティがあってこそのものなのです。
リアルなイメージwhatと方法howの両輪が揃って初めて、強い影響力を発揮できるいうわけです。
なお、先ほど私はゴールイメージと言いましたが、これは何も組織目標のことだけとは限りません。一人一人のメンバーが一ヶ月後どうなっているべきがということもゴールイメージに入りますし、机の上がどう整理されているべきかやお客様がどんな反応を示しているべきか等も入ります。対象や時間軸が異なっても、リアルにイメージできるすべてがゴールイメージになりえます。
意識的にであれ、無意識的にであれ、成し遂げたいことがらについて、どれほどリアリティを持ってイメージできているかがリーダーシップの前提になるわけです。
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