人事制度は、会社の利益を配分し、組織を戦略に従わせ、モチベーションを生み出す、きわめて重要なシステムです。
我が国の人事制度の移り変わりを簡単な物語で理解しておきましょう!
人事制度の物語
1.チョコレート屋さん開業
むかーしむかし、今から70年ほど前に、ある国がありました。
その国は戦争に負けたばっかりで、お金も食べ物もあまりありませんでした。
明日の食事もどうするか困ることもありました。
しかし、みんなその国をまた栄えさせようと、目をキラキラさせてがんばっていたのでした。
その中の一人に、チョコレート好きの男がいました。
彼はアメリカ兵にもらったチョコレートのおいしさが忘れられず、チョコレート売りになりました。
アメリカ軍からチョコレートを調達し、それを売ったのです。
チョコレート屋は評判でした。みんなが集まってきてチョコレートを買っていきました。
すると今度は一人では人が足りなくなってきました。
チョコレートをアメリカ軍から仕入れてい来る人、チョコレートを運ぶ人、チョコレートを様々な場所で売る人。
1年後、たくさんのチョコレート好きが集まって、チョコレート屋はついに会社になりました!
チョコレート好きのあの男は社長になったのです!
2.【やさしい制度】みんな食べていけるように! ~年功主義~
会社はとても順調でたくさんのお金をかせぐことができました。
社長はどうやってみんなでお金を山分けするか考えました。
社長は優しい男だったので、みんなとみんなの家族がご飯を食べていけるように、お金を山分けすることを考えました。
でもあまりあげすぎてしまうと、今度はチョコレートを作ったりするお金がなくなってしまいます。お金がなくなると会社はつぶれてしまうのです。
「あいつは、もう3人の子の父親になるんだから、このくらいのお金が必要だろうな」
「あいつはまだ若いしひとりものだから、このくらいでいいかな」
「あいつはもう50になるのか。たしの長男は確か高校に行くんだったな。金も必要だろうからちょっと多めにしておくか」
「あいつは今度ついに結婚だな。嫁さんもらうんだから、給料も増やしてやらんとな」
こんな感じでみんなの給料を決めていきました。
主に年齢、家族構成などを考えて、その家族の生活に必要となるだけのお金を渡すようにしたのです。
大体年齢が上がれば上がるほどお金が必要になってくるので、年を取るほど給料は増えていきます。
それでも、チョコレートはたくさん売れるし、お金はいっぱいあったので、会社は困ることはありませんでした。
そんな会社で働きたくて、たくさんの若者が田舎から町にやってきたのでした。
社長も、会社とは社員とその家族にめしを食わせていくのが務めだと思っていたのです。
3.【おおらかな制度】能力に応じた給料を! ~能力主義~
みんなのがんばりもあって、その国も大きく成長していきました。
戦争に負けたばっかりだったころと比べると、ものすごい成長でした。
もちろん、社長の会社もどんどん成長していきました。
今や国中にチョコレートを売るようになりました。
アメもガムも売るようになりました。
社長のチョコレート会社で働く人も、それはもうたくさん増えたのでした。
何もかもが順調に見えましたが、いろいろ社内には問題も出てきました。
能力の低い人が上に立つことが出てきてしまったのです。
ある地域の売上は、能力の低い人がやりたい放題やったせいで、下がってしまいました。
社長は考えました。
能力のある人には上に立ってもらってもっともっと活躍してほしいし、給料もたくさんあげたい。
働かないやつや能力のないやつにはあまり給料は払いたくないな。
そこで考え出されたのが、こんなルールです。
今度は年齢ではなく、能力でランクを決めることにしたのです。
「みんながどのくらいの能力があるのかを、わかりやすくランク付けしよう。例えば1~20とか」
「お金はこのランクに応じて払うことにしよ」
「能力を中心にして考えるけど、少しは年齢も考えてあげよう」
こうして、年齢で給料を決めるやり方から、能力で給料を決めるやり方に変わりました。
これを能力主義と呼ぶのでした。
4.結局、年齢基準に戻ってしまう…
ところで、能力って何でしょう。
このことが社内で大きな問題になりました。
「能力っていうのは、チョコを売りさばく能力のことだよ!」
「いやいやチョコを作る人やカカオを買ってくる人がいなければこの会社は成り立たないよ。売る能力だけじゃだめだよ」
「能力って言ったっていろいろあるよね」
「コミュニケーション能力だって立派な能力だよ」
「能力って発揮されなければ意味ないよね」
「いやいや潜在能力が重要だよ」
「潜在能力ってどうやって図るの?」
「能力って何?」の論争が巻き起こりました。
どんな結論になったかって?
これが面白いんだけど、結局年齢を重ねたら能力は増えていくはずだよねっていうことになってしまったんです。つまり、年齢100%で給料を決めていたのを、年齢80%+能力20%に変わった程度です。
8割の人は年齢を重ねると能力が身についたとみなされ、自動的に課長になり、給料も上がりました。
こうして、社長が払うお金はやっぱりどんどんどんどん増えていってしまったのでした。
「でも、国も会社も成長しているしお金も困ってないし、まぁいっか!」
5.【シビアな制度】成果を上げた奴がえらいんだ! ~成果主義~
結局年齢が上がれば上がるほど給料が増えるわけですが、会社にお金がいっぱいあれば問題ないのです。
でも、ついにその時はやってきました。
会社の成長が止まってしまいました。チョコ会社もついに売上が上がらなくなってしまったのです。
でも社員の年齢が上がれば上がるほどお金を渡さなければならないので、毎年払うお金は増えていきます。
「もし、社員に払うお金が、社員が稼いでくるお金より多くなったらどうしよう・・・」
社長は怖くなってしまいました。なぜってもしそうなったら会社のお金がなくなって、カカオも買えなくなるし、工場も動かなくなるし、会社を続けていくことができなくなるからです。
「よし、また山分けのルールを変えよう!」
社長は考えました。
年齢で給料を渡すと、毎年出ていくお金がどんどん増えていってしまう。
能力で給料を渡すと、結局年齢が基準になってしまうので、これまた出ていくお金がどんどん増えていってしまう。
「そうだ!ならば、その人が出した成果に応じて給料を出そう!
みんなが稼いできたお金が100あったら、みんなに80配ればいい。
みんなが稼いできたお金が200あったら、みんなに160配ればいい。
そうすればお金が足りなくなることはないんだから!
みんなに配る160は、能力があるなしではなくて、実際に頑張って行動して成果を出した人に多く分けてあげよう。
そうすればみんな納得してくれるはずだ!」
こうして成果主義が始まりました。
成果主義は成功したのでしょうか。
いや、社長は頭を抱えています。
なぜって?
昔のチームワークは壊れてしまいました。
個人がどれくらい働いたかが大切なので、協力しあおうとしなくなったしまったからです。
やる気が下がってしまいました。
成果がわかりにくいけど大切な仕事をしている人がやる気をなくしてしまったのです。
また、成果を出せない人がくさってしまったのです。
文句が多くなりました。
簡単な目標を持っている人は褒められて、難しい目標を持っていて達成できない人は怒られるから。
一生懸命がんばっていたのにたまたまある事情で、うまくいかなかった人は褒めてもらえないから。
どの制度にしても社長を頭を悩ませ続けるのでした・・・
6.まとめ
年功主義 | 能力主義 | 成果主義 | |
評価基準 | 年齢 | 保有能力 (結局年功的に) |
成果 |
性格 | 年功序列 生活保障 |
年功序列・終身雇用 生活保障 新卒一括採用 正社員 |
成果主義 リストラ・中途採用容認 雇用形態の多様化 |
年代 | 1940~ | 1970~ | 1990~ |
主な制度 | 「職能資格制度」 | 「目標管理制度」 |
コメントを残す