従業員満足度調査(ES調査)の事例をリアルにご紹介します。実際のケースから、調査実施の全体像がイメージできます。
【事例】家具卸会社の従業員満足度調査
現状
しかし、結束力は高まるどころか、ワークライフバランスが崩壊して不満が蔓延しているとのうわさがちらほらと人事の耳に入り始めた。
人事担当者は次のように考えた。今この会社は、上意下達が常態化しており、従業員一人ひとりの声が封殺されてしまっているのではないか。より民主的な経営に切り替える必要がある、と。
サーベイを実施することにより、現状を情緒的にではなく、定量的に把握し、科学的アプローチで解決策を講じることが今後のこの会社に必要だと考えた。
実施
最終指標を従業員満足度ではなく、モチベーションと置いた。モチベーションが低いということは前々から言われていたが本当に低いのか、どのくらいの人数がどのくらいの低さなのかを正確に定量的に把握したかった。
属性を、役職別(管理職と一般社員)、性別、部門別に設定した。
「競合に差をつけて、顧客をより喜ばせるために、どのようなことに取り組んでいったらよいかについてご自由にお書きください。」
従業員の本音を引き出したかったので、やはり匿名による実施であった。
結果
一般社員のモチベーションが低いことがデータから明確になった。もちろんモチベーション高く取り組んでいるものも一定数いたが、それに比してモチベーションが低いものが半数以上を占めていたことがデータから明らかになったのである。
ではそのモチベーションを低めている原因は何か。
結局、上司のマネジメントがまずいという結論になった。
この会社で昇進するためには、多くは営業のハイパフォーマーでなければならない。しかし、営業のハイパフォーマーはマネジメントのハイパフォーマーではない。「名選手必ずしも名監督ならず」である。
モチベーションの低さは、「上司の積極的傾聴」の低さや「仕事のエンパワーメント」の低さに現れた。ほかの項目と合わせてみると、次のような構造が明らかになってきた。
上司は典型的なハイパフォーマーで自分の仕事に絶対的な自信を持っている。部下に仕事を任せることもなく、一方的に指示を出し、意見を聞くこともない。そこでは自主性が軽んじられ、命令されなければ動かない文化が育ってしまった。
いずれにせよ、上司のマネジメントが人、モノ、カネ、情報、のうちの「人」と「情報」を十全に活用できていないということが見えてきた。
マネジメント研修は実施しているものの、座学でほぼ実施するだけのものになっている。研修は事実上、マネジメント層が久しぶりに集まって、飲みに行く口実のようになっている。
対策
①サーベイデータをマネジメント層で共有し、講師を招聘し、マネジメントとは何かを再度学んだ。
②そのうえで、現状、職場と部下の一年後の目標、職場と部下の一年後の計画を立ててもらうワークショップを実施する。
③ワークショップのアウトプットをマネジメント層の上長(主に部長)に承認してもらう。
④現場で計画を実施
⑤二か月後に集まって成果を共有する。
⑥ ④⑤を繰り返す。
⑦再度サーベイを実施して成果を確認
従業員一人ひとりが意見を出せるようにする面談を最低でも二週間に一回実施することにした。その面談では次のようなことを聞くことにした。
・今仕事に集中できているか。
・今仕事を面白いと感じることができているか。
・仕事で自分を生かせていると感じられているか。
・現場で気づいたことはないか。
などなど
部下の話を聞かない者、部下の話を否定する者が現れることも想定されたため、成果共有会ではいかに部下の意見を引き出すことができたかを重視する。
結果
なにより皆がいきいきと語りだすようになった。あいかわらず、部下の話をさえぎってしまう上司もいたが、社内の文化はだいぶ変わってきているように見える。なにより大きかったのは、営業で意見が活発に好感されるようになったことだろう。これらが成果につながった事例も出てきている。まだまだこれまでの文化を覆すまでにはいたってないが、この取り組みを当たり前の文化となるまで、力を尽くすつもりだ。
コメントを残す